Eビジネスマイスターに聞く!JANES-Way 共催セミナー ブログ メルマガ リリース スタッフ募集 サイトマップ


Eビジネスマイスターに聞く!






株式会社インプレス 日刊工業新聞社 株式会社マーケティング研究協会
 共催パートナー募集!!

 
■ Report
  
第76回「Eビジネス研究会」                          平成18年9月29日(金) 
   
テ   ー  マ: 『「ワッチミー!TV」フジテレビ初の社内ベンチャー、
                      Web2.0時代のビジネスモデルとは』
〜日本版YouTubeは、映像をコンテンツとしてネットにどう入り込むか〜
   
Eビジネス:
マイスター
フジテレビラボLLC合同会社
代表者 時澤 正 氏
    
当日の様子はこちらから 当日の資料(抜粋版)はこちらから
               

76回目の今回は、フジテレビラボLLC合同会社 代表者の時澤 正氏をお迎えして、テレビ局から生まれたユーザー発信型映像サイト「ワッチミー!TV」 のサービス概要と今後の可能性などについてお話いただきました。


■動画CGMの時代とは何か?
   

一般の人から募集した動画をネット上で公開する「ユーザー発信型映像サイト」に高い関心が寄せられています。中でもアメリカのメジャーサイト「You Tube」は、日本の映像界にも大きな影響をもたらしました。
こうした時代に、テレビ局はどのようにインターネットと向き合っていくべきか――。
こんなことを考えながら、時澤氏はフジテレビ初の社内ベンチャー「ワッチミー!TV」を立ち上げたといいます。


「You Tube」は、昨年2月にサービスを開始したにも関わらず、1日の投稿が約5万本あると言われています。ちなみに「ワッチミー!TV」は、1日に約50〜100本ですから、それは膨大な数と言えるでしょう。
実際「You Tube」には、様々な問題もあると言われていますが、彼らの出現によって、一般の人が動画を世界に向けて掲載し、人に見せるという文化が生まれたことは間違いありません。さらに、アメリカではこのようなサイトが数百あると言われています。

 
また、近年ではブログやSNSなどが出てきたことにより、これらが「日々の出来事に記録をつける」「自分の知っていることを人に教えたい」といった人間本来の欲求を目覚めさせている、と時澤氏はいいます。時澤氏は、そうしたツールの発展形として「You Tube」を捉えています。


■テレビ局が動画CGMに参入する意味と背景  


時澤氏がブロードバンドというものに初めて関心を持ったのは、2004〜2005年頃でした。当時、友人からアメリカの「BBTV」について紹介された氏は、コンテンツ数の多さ、映像の鮮明さにカルチャーショックを受け、これこそが一つの「テレビの出口」であると考えました。そして、2004年の終わり頃から本格的にインターネットのビジネスに取り組んだのです。


その後、日本でも2005年4月にUSENが「GyaO」をスタートさせ、大量のコンテンツを次々に買い込み、本格的な動画配信時代が幕を開けました。一方、フジテレビはライブドアとの一連の騒動を経て、一時インターネットとテレビの融合について模索し、2006年ついに「ワッチミー!TV」は、産声を上げました。


その名前の由来は、「ワッチ・ミー=私を見て」すなわち、誰もが世界中の人に自分の知っていること、パフォーマンス、特技などを見てもらうための「人間映像サイト」を目指しています。


しかし、会社を作るにあたっては、社内的に「なぜ、テレビ局がそんなことをする必要があるのか」「そんなリスクの高いビジネスに手を出してよいのか」といった様々な意見があったといいます。CGMでは、一般の人が撮影した映像を配信するわけですから、すべて許可を取って撮影しているテレビ放送とは180度異なるわけで、会社としてのリスクを訴える声が上がるのも無理はなかったのです。  


時澤氏は、テレビと「ワッチミー!TV」の違いについて、「Web2.0の流れの中で、テレビはロングテールの最も首の部分にあたり、基本的に1,000万人以上が見るコンテンツしか商品にならない。それに対して『ワッチミー!TV』では、1,000人が見るだけでも商売になるようなビジネスモデルになっている」と説明しました。

 
さらに、「ワッチミー!TV」のもう1つの狙いは、新たなクリエーターの才能を発掘することにあります。プロ・セミプロ・アマチュアを問わず、幅広く募集した動画をネット上で公開していく中で、各分野の新たなスターを産み出したり、映像に詳しい人材を他局より先に発掘することができるというメリットもあるのです。


■ワッチミー!TVの特徴
 


では、「ワッチミー!TV」のサービスについて見ていきましょう。特徴としては、以下の5つが挙げられます。


1.誰でも簡単に映像を配信できる。撮影は携帯電話やウェブカメラでも可能。  
  試験中ではあるが、ウェブカメラを使えばライブ放送も可能となる。


2.映像は、ランキング順、カテゴリー別など用途によって検索することができる。
  また、制作者のプロフィールや彼らが収集した映像などを、「マイページ」で見る
  ことができる。そして、映像を媒介として人と人とがつながっていく。


3.それぞれの映像は、自分のブログなどのサイトに貼り付けることができるので、
  そこでさらなる広がりをみせる。


4.「ワッチミー!TV」編集部側が作った企画もコンテンツとして流している。


5.人気の出たコンテンツに対しては、フジテレビやグループ内の映画会社、レコー
  ド会社とタイアップして商品化することもある。グループ全体で、各分野のスター
  やクリエイターの才能を発掘していく。


現在、日本にはユーザー発信型の映像サイトが、主要なもので約15あるといわれており、上記の1〜3の特徴については、どの会社にも当てはまります。純粋な「ワッチミー!TV」の特徴は4と5になりますが、今後はますます競争が激しくなると予想されます。


次に「ワッチミー!TV」に先行してサービスを開始していた「You Tube」 や「ガリバー」との大きな違いは、以下の3点です。


1.著作権への対応
  「You Tube」の人気コンテンツは、基本的にほとんどがDVDやテレビなどから
  の引用が占めています。しかし、「ワッチミー!TV」の場合は、フジテレビ自身が
  コンテンツホルダーであることから、オリジナルの映像を配信するというのが基本
  姿勢です。したがって、映像の著作権については、基本的に守っていこうと考え
  ています。


2.1つの広告メディアとしての需要
  「ワッチミー!TV」を1つのメディアとして捉えることで、そこには広告需要が発
  生します。アフィリエイトやコンテンツ連動型、検索連動型広告を使ったり、動画
  CMをつけることで広告収益を確保しています。


3.制作会社としての顔も持っている
  フジテレビラボでは、小さいながらも会社の中でコンテンツの制作・編集などが
  すべてできます。映像も作れて、ウェブも作れて、さらにメディアを持つ会社は
  他に例がありません。


■ワッチミー!TVのマーケティング



時澤氏は、「いかに面白い映像を視聴者に見せようか……」ということを日々考えているそうですが、コンテンツの内容の濃さでは、大きな制作費をかけているテレビに太刀打ちすることはできません。


そこで、「ワッチミー!TV」独自のマーケティングの必要性を感じる中で、「面白いもの」よりは、むしろ「情報性の高いコンテンツ」の方が効果的であると考えています。


テレビの場合は、映像が勝手に出てきて、何とか視聴者を振り向かせようという「プッシュ型」のメディアであるのに対して、インターネットの場合は、視聴者が自分から情報を取りに来てくれなければ成立しない「プル型」のメディアであるため、その中にエンターテインメント性を求めることは非常に難しいといえます。


また、フジテレビラボでは、今後も技術開発を積極的に行い、企画コンテンツの制作等も行っていこうと考えています。中でも最優先の課題の1つは、携帯の閲覧機能を付けることです。


現在、「ワッチミー!TV」は、携帯で映像をアップロードすることはできますが、閲覧することができません。これを早いうちに開発していきたいと時澤氏はいいます。また、編集機能についても同様です。現在流通している映像編集ソフトは、一般の人には使いづらいため、誰もが使える簡単な機能にしていくことが当面の目標だといいます。  


■Web2.0時代の放送と通信


では、Web2.0は放送局にとって追い風なのでしょうか、それとも向かい風なのでしょうか。これは、なかなか言い難い所があると時澤氏はいいます。なぜなら、大手のキー局と地方のローカル局では、ビジネスチャンスが異なるからです。


インターネットによって、地方のローカル局では映像を発表する場が増えるわけですから、追い風となることは間違いありません。しかし、そうして様々なコンテンツが横並びになることは、放送業界のピラミッド構造を崩すことにつながるため、キー局にとっては逆風になるのです。実際、各地方局が自分達の番組や映像をインターネットで流すということになれば、ネットワークが崩壊して、キー局による行政ができないことになります。


Web2.0というのは、表現者の平等化が進んでいくことです。しかし、放送は免許事業ですから、公共物として、あるいは誰もが安心して頼れるライフラインとしての役割を今後は果たしていくことになると時澤氏はいいます。


一方で、インターネットは個人の表現の自由を可能にしたメディアです。したがって、表現の自由が認められる社会において、放送と通信とは「車の両輪」にあると時澤氏はいいます。放送としてのフジテレビを運営しながら、今度は「市民一人ひとりの表現の手段としての、CGM(=消費者発メディア)というものを考えていこう」――これが、「ワッチミー!TV」の発想なのです。


最後に、改めてフジテレビラボの事業趣旨を考えた時、時澤氏は「ワッチミー!TV」を通じて、映像を作ることの「楽しさ」や「充実感」をもっと世間に知ってもらいたいといいます。すなわち、映像CGMリテラシーを日本にも普及させたいということです。


誰もが自由に映像を世界に向けて発信できる時代――それは今まで全く考えられないことでした。そんな時代にユーザー発信型映像サイトを「裏の文化」にしてしまうのか、それとも「表の文化」に育てるのか――。この点がいまサービス業者とユーザー双方に問われています。






● 質疑応答


Q1 「ワッチミー!TV」では、映像の掲載に編集部が介在しているということで、労働集約的な部分があるため、事業として成功するのではないかと感じました。登録するユーザー数や投稿される動画の数によってどれだけ広告が取れると予想していますか? また、将来的にはどれくらいの事業規模を見込んでいますか?

A1 私たちの場合、ビジネスモデルとして考えると二本柱ですが、制作会社としての部分がかなりありますので、現状はそちらの方で食べているという所です。しかし、メディア(媒体力)として考えてみると、やはり100万人くらいのユニークユーザーを抱えた時点から、初めて意味が出てくるのではないかと思っています。 計画では100万人のユーザーを抱えるのは、堅く見積もって3年目という予想を立てています。これは1ユニークユーザーあたり、いくら年間広告費をくれるかということから計算して、3年目の時点でおそらく100円くらいになると思っていて、その時点で制作会社としての機能を抜きにして、広告だけの収入でトントンになると計画しています。 そして、5年目くらいでそれまでの設備投資なども回収できると思っています。インターネット会社の事業計画としては、かなり遅い方になるとは思いますが…。


Q2 サイトのサービスの中で登竜門的な機能があるというお話で、おそらくこれは質のいいコンテンツをテレビで流したり、DVDにして販売するということだと思います。しかし、実際に一般ユーザーが作ったコンテンツの中で、どれくらい質のいいものが出てくるとお考えですか?

A2 現在は、一般の方だけでなく、セミプロの人たちにも映像の投稿を呼びかけています。全体としては、プロ、アマと分かれているのではなく、なだらかになるようなことを考えています。 セミプロの方を中心に、例えばキャスター志望の方やお笑い志望のグループなどには大いに期待していますし、そういった映像に関しては今でも多く出てきています。 本当の素人の方が撮ったものに関しては、商品化できるのはまだ少ないのですが、ビデオの取り方とか編集の仕方などをサイト内で教えて、サポートしています。


Q3 「ワッチミー!TV」のビジネスは、見ている人に滞在期間を長く取ってもらい、広告に結びつけるというビジネスモデルだと思うのですが、逆に滞在時間が短い場合の広告の取り方は、どうなりますか?

A3 「ワッチミー!TV」は、現在、サイトとしてユーザーを増やす時期であり、まだ、広告に関しては、正直あまり研究してないのですが、要はCMをどうとり入れるかということだと思います。今、各コンテンツの終わりに「ジャンクション」という5〜7秒のCM的なものを付けていますが、将来的にはこれをユーザーにポイント化することなども考えています。広告に関しては、まだまだ試行錯誤の状況です。


2006.9.29
                                     Copyright (c) 2007 Eビジネス研究所. All rights reserved.