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■ Report
  
第93回「Eビジネス研究会」                         平成19年12月21日(金) 
   
テ   ー  マ:

『マイクロソフトのオンラインサービス戦略が実現する
                新しいユーザーエンゲージメント』
〜リッチな体験を追求した新しい
   オンラインコミュニケーションとオンライン広告の展開〜

   
Eビジネス:
マイスター
マイクロソフト株式会社
執行役 常務 オンラインサービス事業部長
笹本 裕 氏
    

93回目の今回は、マイクロソフト株式会社執行役常務 オンラインサービス事業部長の笹本裕氏をお迎えして、「オンラインサービス戦略が実現する新しいユーザーエンゲージメント」をテーマに、新世代Windows Liveのデモなどを交えてお話いただきました。

■オンライン広告の市場

日本でインターネット広告市場が転換期を迎えるのは2011年だと言われています。現在のところ、メディアの視聴時間は、まだ39%がテレビに費やしており最多。ところが、インターネットの視聴時間も28%とテレビに迫っているのです。当然、広告もテレビからインターネットに流れてくるだろうと思っています。

世界的に見ると、日本では自宅におけるインターネット利用が70%と、世界でも最も多く普及しています。ブロードバンド環境がアメリカさえも抜いて普及しているのです。また中国の場合は検閲という制約を抱えています。世界の中でも、日本は自由な市場を形成できる国であると言えるでしょう。

2011年が転換期となるのは、全ての家庭が地上デジタルテレビへ移行し、インターネットも100%ブロードバンド化へ進むというインフラ環境のためです。広告市場は、今から5年間で2倍成長の7600億円に達すると言われており、圧倒的に大きな市場となるでしょう。それに従い、オンライン体験も多様化すると予測されています。

■マイクロソフトも広告ビジネスを柱に

マイクロソフトでは、ソフトウェアのビジネスに加え、広告のビジネスにもう1つ柱を作っていこうと推進しています。今日は、どのように事業を構築していくのか、その構想についてお話しします。私はMSN、Windows Live、Live Searchという3つのサービスを担当しています。それらをいかに広告ビジネスで大きくしていくかということが課題です。

私は、メディアとは見る人に感動を与えるものだと思っています。オンラインサービスの場合、感動と、技術を通して感謝してもらう、そのかけ合わせで最適なメディアが誕生するのだと思います。そういう自分の思いも、マイクロソフトのサービスを通してユーザに届けたい。個人としては、そこがやりがいに思っている部分です。

いま、ビル・ゲイツがなぜインターネット広告に興味を持っているのか、それが今日お話しする次世代オンラインサービスの核心でもあるのですが、彼にとっての広告は、僕がメディアとして考えていた広告とは思考回路が違うのです。

彼には、常にアルゴリズムが頭にあるのです。アルゴリズムを開発できる会社はたくさんあるのですが、中長期的にはマイクロソフトとGoogleさんの2社しかないだろうと思います。

もう1つの軸は、サービス化です。いかにアルゴリズムを高めていくかと、データのアルゴリズムを駆使していかに最適なビジネスを作るかということを並行して実現させなければなりません。

また、コミュニケーションにはあまりアルゴリズムは関係ないのですが、SNS、ブログ、コミュニティーと多様化が求められます。

Googleさんの場合、いかにデータマッチングの精度を上げるかに注力をされていると思いますが、Live Searchはショッピング、エンターテイメントなどのコンテンツの充実を図り、次世代のポータルをめざしています。

アルゴリズムにしろ、データセンターにしろ、処理能力が高くなければなりません。データセンターにも、これ以上できないというくらい、投資をしています。

■新世代Windows Liveでいつでもどこでもつながる、共有する

今年11月の記者発表では、新世代Windows Liveということでリリースさせていただきました。全部で9つのサービスを発表しております。

新世代Windows Liveでは、従来からの柱であるHotmail、Messengerといったコミュニケーションサービスに加え、フォトギャラリー、スペース、イベントなど共有サービスが新たに加わりました。さらに、それらのサービスに場所を問わずにアクセスすることが可能になっています。Windows Mobile 6を通してケータイから、あるいは出先や他人のPCでもSkyDriveにログインすることができるのです。そして、これが最も重要であると思っているのですが、ネットワークがゆえにセキュリティーサービスも提供しています。フィルタリング機能のついたOne Care ファミリーセーフティの提供などです。これらのサービスがシームレスなワンパッケージになっていることがWindows Liveの最大の特長です。

■クライアントソフトウェアとWebサービス

Windows Liveは、ソフトウェアをダウンロードして使っていただくサービスです。マイクロソフトではソフトウェア+サービスと言っているのですが、リッチなコンテンツを利用する場合はソフトウェアで処理をするのがユーザにとって最も使いやすいのではないかというコンセプトです。データを取りに行って戻ってくる、例えばゲームのようなコンテンツの場合、ブロードバンドが普及し、リッチになればなるほどデータ量が増え、インターネットだけでは完結できないケースが増えてきます。そのような必要性を見据えて、その”はしり”として提供するものです。

ソフトウェアだから、処理速度が速い。さらに、インターネットサービスと融合している。リッチなコンテンツを楽しむことができる。そこがGoogleさんとの差別化のポイントと考えています。リッチかシンプルか、という選択肢でユーザさんに選んでもらおうと考えています。

■Windows Liveが提供するソフトウェア

ここで、Windows Liveが提供するソフトウェアの1つであるWindows Liveフォトギャラリーをご紹介します。これは写真、ビデオの編集・管理・共有サービスで、Windows Vistaの「Windowsフォトギャラリー」の後継クライアントです。Windows XPにも対応しています。

基本的な機能としては、写真の修整や、写真にタグをつけて検索できるようになっています。さらに、無料提供ソフトでありながら、今までは1万円以上の有料パッケージで提供していたような機能も搭載しています。例えば、写真合成機能。20枚くらいの写真を合成して1つのパノラマ写真に仕上げることも可能です。

このように、取り込んで編集した写真は、サーバに置いていろいろな人に見てもらいたいのではないでしょうか。そこで、写真共有サイトのFlickrに投稿したり、Windows Liveスペースに送信してブログ発信をしたり、知人にメッセンジャーで知らせることもできます。見る側がWindows Mobile 6搭載のケータイを使っていればケータイからも見てもらうことができるのです。その他、オンラインプリンティングサービスとも連携しており、セブンイレブンなどのショップに簡単に注文を出すことができます。これら全てのことが、ドラッグ&ドロップと、1クリック〜2クリックでできてしまうのです。

今までのサービスはphotoだけ、ブログだけ、メッセンジャーだけという単体での提供でしたが、Windows Liveではこれらを一体で使うことができます。インテグレーションが実現しているのです。

■Windows Liveエージェント

次に、Windows Liveエージェントをご紹介します。既に99年にサービスインしていますが、エージェント開発の技術を持っている会社を買収してバージョンアップを図りました。

最初にご紹介するのは、「まいこ」というエージェントです。名前の由来を聞かれることがありますが、マイクロソフトだから「まいこ」、意外と単純なんです。Windows Live IDを、友達を追加するようにメンバーに登録すると使えるようになります。「まいこ」の役割は、Windows Live Messengerのアドバイザーです。メッセンジャーの利用方法を、先生のようにFlashのムービーで解説してくれます。また、サービスのお知らせやプロモーション情報も教えてくれます。

また、「エンカルタ総合大百科」のエージェントもあります。これは、パッケージソフトウェアをもとにして作っています。総合大百科からの検索結果を会話ウィンドウで見せるのです。例えば「中国の人口は?」と質問すると、オンラインで提供している情報を引っ張ってきますから、常に最新の情報に誘導してもらえるわけです。

エージェントの用途は大きく分けて3つあります。1つは、データベースから引っ張ってきて自動応答をさせること。2つめに、プロモーションへの活用。キャンペーンなどタイムリーな情報を提供することができます。そして、自然言語処理をしているので、暇つぶしや癒しとして日常的に活用してもらえることです。「まいこ」は名前を呼んでくれたり誕生日を覚えてくれたりしてインタラクティブな会話をするので、本来の、メッセンジャーの利用方法を教えてもらう以外に、この機能を楽しんでいる人もたくさんいます。特に、40代以上の男性にファンが多いようです。

このように、Windows Liveエージェントは、コミュニケーションとともに情報収集ツールとしても多くの特長を持っており、アルゴリズムを使って検索優位性を築けると考えています。パートナーさんにもエージェントを提供し、広告ビジネスに繋げていく計画です。

■最新のLive Search

サーチはGoogleさんと競合するエリアとなるところですが、Live Searchにおいては、基礎となる検索クオリティの向上をめざしています。

2年前は、Google、Yahoo、Live Searchという業界順位でした。2006年からの改善により、アメリカでは2007年にGoogleさんに追いつくことができました。日本ではYahooさんが2007年に伸びを見せました。相当の投資をして、アルゴリズム向上を実現したのです。

このような動向を受け、Live Searchではインデックスサイズを4倍に拡大しました。さらに、豊富なデータから絞り込みのアルゴリズムを改善しています。データに関しては深掘りをしていく方針です。

米国のLive Searchは「商品検索」「地域情報・地図検索」「エンターテイメント」「健康情報」を4つの柱として、検索クオリティを構築しています。なかでも健康情報に関しては、「ヘルスボルト」という健康に関する専門サーチを開始しています。普通の検索エンジンですと、例えば「メタボ」で検索すると、通販だとか雑多な情報にヒットすると思います。これが、ヘルスボルトであれば医療関係のサイトなど、健康情報だけが検索結果に出てくるのです。さらに、カルテを登録しておくと、自分の健康状態にマッチングした情報も提供してもらえます。このようなサービスの日本向けプランを開発していきます。

■Windows Liveにおける広告ビジネス

今年5月に、デジタルマーケティング・サービス企業であるaQuantiveという会社を60億ドルで買収しました。aQuantiveは、Atlasというソフトウェアや、広告ネットワークの「Drive pm」、また、いくつかのクリエイティブエージェンシーも傘下に持っています。

同社のアドネットワークを活用することにより、今までは配信インプレッション保証でデジタル広告を販売していたものが、リスティング広告でやっているようなパフォーマンス実績課金ができるようになりました。つまり、これまでは事前に予測された数量しか広告が売れなかったのが、ニュースの影響などによるページビューの急激な増加に応じてオークションがかけられるようになるのです。

もう1つのメリットは、リターゲティング広告ができるようになることです。これは、一度サイトを訪問したユーザをもう一度サイトに誘導するというもので、良質なユーザを戻すことが期待できます。何インプレッションかという数の保証から、良質なトラフィックの保証へと進化すると言えるのではないでしょうか。

質疑応答

Q1 アドセンターのサービスは、日本ではいつ位に開始されるのでしょうか?

A1 実はaQuantiveの買収が、アドセンターの開発と重なっておりまして、サーチの広告とディスプレイの広告が融合できそうだという議論になり、再開発を行っております。


Q2 初音ミクのサーチでWindows Liveの評価が上がったのでは?

A2 はい、そういう現象が起こったということをビル・ゲイツにも報告しました。日本ではLive Searchを使って検索することを、「ググる」をもじって「ビる」と言っていると話したのですが、本人には残念ながらうまく伝わらなかったようです。


Q3 Windows Liveを、一般ユーザにはどのように告知・普及させていく計画ですか?

A3 Windows Liveのリリースによって、マイクロソフトは大きく変わりました。それまでのMSNというブランドを外したのは、オンライン上のプラットフォームとしてどこの企業さんとでもお付き合いしましょうというスタンスの表れです。USENのGyaoさんと一緒にユーザを増やしていくことをすでに発表しておりますし、今後もパートナーさんとの協業が増えると思います。


Q4 Wikipediaやソーシャルブックマークなど、集合知はどのように位置づけていますか?

A4 ユーザが集合知として作っていくのはデータの部分であると捉えています。データを探すのはアルゴリズム。Windows Liveが実現するのはその組み合わせだと思っています。


2007.12.21
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