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■ Report
  
第86回「Eビジネス研究会」                           平成19年7月6日(金) 
   
テ   ー  マ:

『セカンドライフを凌ぐ!?
   日本版の仮想空間「スプリューム」の実力とその全貌』

 〜シームレスにサーバー間を遊泳する
                 メタバースビジネスの可能性〜

   
Eビジネス:
マイスター
株式会社スプリューム
代表取締役 梶塚 千春 氏
    
当日の様子はこちらから 当日の資料(抜粋版)はこちらから
             

86回目の今回は、株式会社スプリュームの代表取締役 梶塚 千春氏をお迎えして、『セカンドライフを凌ぐ!? 日本版の仮想空間「スプリューム」の実力とその全貌〜シームレスにサーバ間を遊泳するメタバースビジネスの可能性』をテーマにお話しいただきました。


■『スプリューム』とは何か?



Webはハイパーリンクで関連付けられた「平面的な」カードの集まりと言えます。今までインターネットは、このWebを中心に発展してきました。一方、わたしたちが住む世界は「立体的な」3Dの世界です。そこでは一人一人が時間と空間を占めています。視覚も聴覚も他者と共有しているのです。『スプリューム』がめざしているのは、このような体験型のワールドの追求です。インターネットがWebからワールドに進化することで、情報の閲覧、コミュニケーションが飛躍的に変化します。


なお、『スプリューム』では3Dにとらわれることなく、新しい体験、よりリアルな体験を提供したいと考えています。必要がなければ平面的に使う、という柔軟性も兼ね備えています。


■インフラの変化により新しいセカイが可能に  


米国でセカンドライフ以前に注目されていたサービスに、「There」や「Active World」などがありました。「There」の技術は現在、軍事演習シミュレータに生かされています。国内でも、ソニーやNTTが3Dの技術の開発をしてきました。しかしながら、当時の仮想空間は、一般ユーザの環境とかけはなれた技術だったのです。  


スプリュームの事業拡大のきっかけとしては、定額制の常時接続の普及やインターネット回線の広帯域化、そして、Windows VISTAで三次元的な表現が強化が挙げられます。さらに、メタバース事業の認知度の高まりにより、仮想空間マーケットへの期待が高まりました。


■プロジェクトの沿革


日本では、コンピュータグラフィックの利用は1985年の筑波科学万博などの博覧会から始まりました。当時は、3DCGの制作や技術開発には莫大な予算が必要となり、一般の用途に利用できなかったのです。その後、コンピュータの価格がダウンしたため、多くの製作者や開発者が独立しました。スプリューム社の前進となるケー・エー・ジェー社もそのケースでした。


ここで、スプリューム社より前に立ち上げましたケー・エー・ジェー社の取り組みをご紹介しますと、まず1995年に博報堂による『電脳漂流』を企画・制作しました。これは、世界初の3Dゲーム機『3DO』向けに発売された、最初期のコンシューマ向け仮想空間メディアです。2000年にはConnectableRealityプロジェクトを開始し、インターネット博覧会事務局で公開しました。ハイパーリンクに替わる空間リンクを導入した仮想空間閲覧ブラウザを開発し、特許を出願しました。2002年から2003年にかけては、経済産業省などの助成金、補助金を受け、空間リンクにアバターを組み合わせる技術を開発しました。2005年には、特許をライセンスアウトして、女性をターゲットにした3Dチャットサービスを開始し、会員20万人の規模まで発展させることができました。


このような取り組みを経て、仮想空間プラットフォームの事業化段階に入りました。ケー・エー・ジェー社を二社に分割して、新会社スプリュームを設立しました。また、2006年秋には増資による事業拡大を行ない、2007年3月よりオープンβテストを開始しました。オープンから現在まで、この世界を広げてもらえるBtoBtoCのパートナー作りをめざしています。2007年秋には専用ソフトが不要の「プラグイン版」をリリースし、コンシューマに向けて公開する予定です。


■つながる、ひろがる、オープンエンドな仮想世界
 

『スプリューム』はWebサーバからhttp、httpsで配信できるセカイです。ベースになるのは1990年代に策定された仮想空間記述言語VRMLを拡張したものです。空間の配信はオープンエンドになっています。各自が自社、自分のドメイン、URLで空間を配信することができます。市販のツールで空間を作ることができ、既存のWebサービスのインフラとの親和性が高いこともメリットです。  


もう一つの特徴は、Webサーバから配信されるセカイにアバターを組み合わせたものだということです。空間はWebサーバからオープンエンドに、一方アバターはスプリュームサーバに置いています。  


特許の「空間リンク」による、オープンエンドでありながら、ゆるやかにつながり合いながら増殖する世界が特徴です。空間リンクが実現する、サーバーを超えて、どこまでも歩いていける世界によって、仮想セカイ全体がひとつの連続性を持つとともに、別な空間にジャンプするときにリンク先をクリックするというアクションが不要であることから、コンバージョンの概念が変わり、広告効果の向上が期待できます。リンク先の空間が遠くに見えていたり、興味のままに歩いていると隣の空間に入り込んでいるなど、ユーザにとって、よりストレスのない誘導が可能になるのです。


■『スプリューム』のコア・コンピタンス


 ここで、『スプリューム』と他サービスとの比較をお話しします。『スプリューム』は基本登録・利用料金を無料としています。オプションとして個人や企業に対しての有償機能を提供し、収益源とします。セカンドライフのような共通通貨を持たず、既存の決済インフラを利用し、既存のWebサービスと親和性の高いものになっています。  

『スプリューム』の動作スペックは、部分的にセカンドライフより高い動作環境を推奨していますが、かなり快適に動かすことを想定して、そのような表記をしています。実際にはISDNで利用しているお客様もいます。  


『スプリューム』と他サービスとの差別化のポイントは、世界各国に分散したWebサーバから配信されるオープンなセカイということです。『スプリューム』がプラットフォーム的な役割を果たします。サービスを超えてユーザーが行き来きするセカイの中で、仮想空間におけるユーザーのエンティティ、つまり「これが自分である」と証明するサービスが提供できるのではないかと考えています。ベリサインが企業の実体性を保証するように、『スプリューム』は仮想世界におけるユーザ個人の実体性を保証するというコンセプトです。


■スプリューム社が提供するポータル  


現在提供しているのは、体験エンターテイメント型ポータル、つまりテーマパーク的なものです。現在、フューチャータウン、ロックタウンを公開しています。  


ここで、先ほどからの説明で触れた「空間リンク」に関して、実例をご覧にいれたいと思います。ブラウザの上部には、今、表示されている空間のURLが表記されていますが、この、ひとつのURLでまとまって記述される1つの空間がWebの1つのページにあたります。移動してみると、URLが変わるところがあります。例えば”Town203.cr”というファイルが”Town204.cr”にかわったところで隣の空間、つまりWebページで言えば、次のページに移ったことになります。


Webと異なり、空間を移動するときに画面が切り替わることがありません。空間から空間へとシームレスに横断していくことができます。空間リンクを設定するには、それぞれの空間ファイルに隣の空間とどうつながっているか記述しておけばいいのです。空間はYahooジオシティーズのようなフリーのサーバにも置けるようになっています。とても簡便なので、オープンβテストに参加いただいている一般ユーザが作った空間も公開されています。  


次にお見せするのは、リクルートの「じゃらん」や「AB ROAD」のフィージビリティーのために作った空間です。「じゃらん」の場合は、3DCGデザイナーが構築した世界ではなく、写真をベースにした簡易3D空間の例がアップされています。実在する旅館の空間を広角のデジタルカメラで90度ずつの4方向に向けて撮影し、パノラマ画像を作成します。このパノラマ画像を仮想空間の箱状の空間に貼って立体的に見せています。「AB ROAD」の場合では、写真1枚を使った、さらに簡便な空間を作っています。カメラを固定して、3D空間の背景に写真をおいた、擬似的な3D空間としているのです。データが軽く、制作もローコストです。ユーザーにブログ感覚で写真をアップしてもらい、その中を歩き回ることで体験の共有ができるようなサービスも可能です。従来のものに比べて、仮想世界の表現の幅はとても大きいと思います。  


また、スプリュームにはNon Player Characterというものが存在します。これはゲームの用語で一緒に旅をする仲間や店員さんのことです。あらかじめシナリオを設定したNon Player Characterにユーザーとの会話をさせることで、テキストベースでOne to Oneマーケティングを行うことが可能です。  


このほかに、日記や会員間メールなどを備えたWebベースの「プロフィール」ツールを提供しているほか、3D Social Networkingサイトも開始する予定です。これは、現在開発中の空間構築ツールを活用したSNS型ポータルです。自分の部屋、友達の部屋、コミュニティの部屋、タウンのレジデンスなどを、ひとつながりの世界にカスタマイズできる新しいタイプのSNSです。こちらは8月末からのオープンを予定しています。


● 質疑応答


Q1 『スプリューム』では、それぞれの空間をどのようにして見つけるのですか?

A1 URLからたどっていただくか、自分の空間の周辺のMAPがあります。今後は、ツリー構造でリンクをビジュアル化したり、検索の充実が課題となっています。。


Q2 空間をモデリングするエディターは、プロの職人でなくても利用可能ですか? また個人でもサーバを立てることができますか?

A2 提供予定の空間構築ツールは、弊社が提供するVRMLのオブジェクトを読み込んで空間を組み上げる、簡単なツールです。CG制作がわかる方であれば、オブジェクト自体も作っていただくことができます。弊社で空間を置くサーバースペースを無償提供して、コンピュータに詳しくないかたでも、簡単にお使いいただけるようにしています。ちなみに、VRMLのファイルは数十KBのファイルサイズしかなく、サーバに負荷をかけるものではありません。


Q3 戦略についてお聞きします。今後『スプリューム』をどのようにして流行らせていくのか、また、セカンドライフと同じくくりで見られていますが発想的にどう違うのですか?

A3 現在のユーザ比率は1.30代、2.20代、3.40代、4.50代と10代が同じくらいの割合です。20〜30代をターゲットとし、B to CやB to B to Cのバイラルな世界を展開しようと考えています。ポイントはCGMの強化です。株式会社リクルートやコンテンツホルダーとのアライアンスを強化して世界を作っていこうとしています。  セカンドライフとの違いについては、日本のゲームと洋ゲーの違いによくたとえられます。洋ゲーが自由に遊んでもらうとすると、日本のゲームはできることは少ないがホスピタリティーが優れている。あえて批判的に言うと、セカンドライフは「シムズオンライン」のようなゲーム的な要素が強いのではないかと思います。


Q4 『スプリューム』上で作られた制作物は、誰に著作権があるのですか?

A4 アバターも空間も、作った人間に著作権があります。アバターの販売の際は、課金手数料を徴収していきます。ユーザーがつくった空間において著作権の侵害などの問題があった場合、弊社のサーバでデータを保持しているものについては削除要請を行いますが、他のサーバに置かれているものについては、データを保持しているところが削除要請をすることになります。


Q5 空間リンクで隣の空間と自然につなげることや、写真を奥行きのあるように見せる加工は、一般ユーザにもできるのでしょうか?

A5 デモでお見せした空間は、自然につながるようにデザイナーが作り込んでいます。立体的に見える写真空間の写真作成については、Quick Time VRなどに対応した複数写真からパノラマ写真を作成するソフトを活用しています。フリーのソフトも出ていますし、ケータイで撮影した画像でもある程度のものは作れます。


Q6 金銭授受やボットの巡回などに対する安全性はどうですか?

A6 金銭については、一元的な共通通貨を導入せず、webと同じ考え方、ルールを踏襲しています。ボット等を用いたトラブルへの対応については、今後の課題となっています。

2007.7.6
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