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■ Report 第60回Eビジネス研究会
 
『ネット時代の新星、ドリコムの新規事業立案と事業展開の実際』
〜次々と生まれる新規事業の実例を解析する、ブログ・検索エンジン・RSSネット広告〜
 
株式会社ドリコム
代表取締役 内藤 裕紀 氏

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60回目の今回は、株式会社ドリコム代表取締役の内藤裕紀氏を迎えて、ドリコムの新規事業立案と事業展開、そしてRSSを使った今後のビジネスについてお話いただきました。


■ドリコムの誕生と急成長


ドリコムは2001年11月、当時まだ大学3年生だった内藤氏によって設立されました。第一期の決算では、売上が4万円、経常利益がマイナス531万円からスタートし、2003年4月に売上が約7,000万円に達した頃から、ようやく会社らしい姿になったといいます。 その後、業績は順調に推移し、今では「ネット界の新星」といわれるまで急成長を果たしたわけですが、そのきっかけとなったのは、2003年に参入したブログ事業でした。同年8月には、日本初のブログポータルサイト「Myblog.jp」をオープン、10月には日本初のブログコンテスト「Blog of the Yeah!2003」を開催、12月にはRSSリーダーの機能とブログ更新サービスをリリースし、一躍日本のブログ界の主役となったのです。


さらに2004年に入ってからは、一層サービスの充実が図られました。3月には、日本初のソーシャルブックマークサービス「Myclip」をオープンし、月間約2億ページを提供。6月には、はじめて他社へのブログシステム提供も始めました。提供先はGMOをはじめ、オリコン、GDO、Goo-netなど現在13社に及び、サービス開始からわずか2年あまりで約55万人(ドリコムブログを含む)の会員数を獲得したのです。この数字は、日本のブログベンダーの中では、もちろんトップの実績です。


■ある教授との運命的な出会い


このように、ブログ事業の拡大を図る一方、2003年、内藤氏にある運命的な出会いがありました。それは、立命館大学の教授との出会いだったそうです。その教授は、アマゾンドットコムのようなレコメンデーション処理の技術を保有しており、文部科学省に助成金の申請をするにあたり、内藤氏に協力を求めました。結果、3年間で1億3,000万円の助成金を受けることができ、さらなる事業拡大が可能になったのです。


その後、ドリコムはこのレコメンデーション技術を使って検索事業に参入。2004年4月には、日本初のニュース検索サイト「News&BlogSearch」をオープンしました。さらに、同年はインターネット広告事業にも参入し、サイバーエージェント社と共同で、グーグルアドセンスに近い形のコンテンツ連動型広告サービス「BlogClick」をリリースしました。これは、グーグルとは対照的に個人メディアに特化したサービスです。


■利益を生む仕組みをどう作るか


では、ドリコムの新規事業立案における中心人物である内藤氏は、日頃どのような視点でEビジネスを捉え、事業の立案を行っているのでしょうか。その原点は、内藤氏が初めてブログというものに出会った大学時代にまで遡ります。


当時、インターネット系の雑誌「Yahoo Japan」で、アメリカのブログ事情を知った内藤氏は、直感的に日本でも必ずブログが流行る日が来ると確信したといいます。そこで、この新市場に参入するにあたり手本としたのは、中学時代に英語の教科書で勉強した「リーバイストラウス」の思想でした。


19世紀のアメリカでゴールドラッシュの話を聞いたリーバイストラウスは、人と同じように金鉱へ金を掘りに行くのではなく、小さな衣料品店を開き、金を掘る人のための作業着を作って大成功を果たしました。これが、いわゆるジーンズのはじまりです。


つまり、内藤氏はブログが流行ることは確信していたものの、自社の現状では、将来的に予想される会員数争いの体力ビジネスには到底太刀打ちできないと感じ、戦略として、まずは各ポータルサイト向けにブログのOEM用パッケージを作ろうと考えました。 さらに、この時点でこれからのブログ事業の戦略と特徴を、以下のようなステージ別にまとめたといいます。


・ 第1フェーズ……市場が初期の段階では、競合優位性が分からない状態であるため、企画力とスピードで勝負する(R&D期間、BtoCに向けたサービス、製品化に向けた調査、ノウハウの獲得、自社の認知度アップ)。


・ 第2フェーズ……製品化フェーズ(リーバイスでいうところの製品力と提案力の追求)。ブログでビジネスをしたい会社に、サービスを提供する期間。BtoBへの製品化、システム導入中心、製品力と提案力で競合優位性を獲得。


■ブログサービスを定番化するために


しかし、この事業戦略は、いわば今後のブログブームを前提に考えたものであり、内藤氏自身もブームは3年持たないだろうと予想していました。そのため、ジーンズが金を掘る人のための作業着から若者のファッション(文化)になったことで世界的に大ブレークしたように、ブログについても、それを「定番化」することが必要だと考えたのです。これが第3フェーズです。


あるビジネスが「定番化」するためには、次の二つの要素が必要だといいます。一つは「既存のサービスにそのサービスが置き換わること」、そしてもう一つは「消費者に新しい利用習慣が根付くこと」です。ブログについて考えてみると、それに置き換えられるものは何かと考えたとき、企業のホームページではないかという結論に至りました。


そして、出来上がった戦略(第3フェーズ)は、製品の拡販フェーズとして、提携による拡販、安価、簡易なサービスの提供、ASPをメインとしたストック型ビジネスへの進化により、高い利益とNo.1のシェアを獲得するというものでした。また、第3フェーズでは、競合優位性の中に「価格力」が入ってきたことも特徴で、これは主なターゲットとして考えていた中小企業に対するマーケティング戦略といえます。こうした一連の戦略は、現在のドリコムのBtoBビジネスにおけるフレームワークにもつながっています。


■トラフィックを生むサービスを重視


インターネットビジネスにおける事業立案について、内藤氏がモットーとするのは「大事なことは走りながら考えないこと」だといいます。インターネットバブルの頃、会社の事業戦略は「走りながら考えるもの」と答える経営者が多かった記憶があると思いますが、全く逆の発想といえます。


ドリコムでは、先の事業戦略について、2年前からその方針を変えることなく、社員全員が目標意識を集中しています。また、こうすることによって、社員は現状を把握しながら先を見据えることができ、創造性も働きやすくなるといいます。


動きの速いIT業界では、一般的に2年後、3年後を見据えるのが適当だといわれます。例えば、ドリコムではCMSなどの新しいサービスにおいて、今求められているのは価格力ではなく、顧客を持ってくる力、すなわち「トラフィック力」が重要だと考えています。なぜなら、それが他社に対する競合優位性を最も発揮するものだからです。しかし、トラフィックを上げることには当然限界があり、それを解消するためには、他のメディアからトラフィックを誘導してくる仕組みが、BtoCのサービスでは必ず必要なのです。


その典型的な例がグーグルです。グーグルアドワーズとアドセンスは、いずれも他社媒体に広告表示をすることによってトラフフィックを誘導し、売上に結び付けることに成功しています。


■RSSによる今後のビジネス展開


最後にドリコムのRSS事業に関連して、今後、RSSビジネスを成功させるためのヒントを内藤氏にお話いただきました。はじめに、RSSとは、簡単にいうとブログなどを中心としたサイトの更新をルール化している技術のことです。RSSを使ってどういうビジネスができるかというと、例えば、今までメーカーで商品を購入していた人に会員登録をしてもらい、商品のバージョンアップ情報を送ったり、メールマガジンを送ったりすることが、RSSリーダーに登録してもらうだけでできるわけです。


内藤氏は、RSSを使った、BtoCのビジネスモデルを考える上では、全く新たなものを考えるよりも、典型的な広告ビジネス、ECビジネス、ユーザー課金の中に当てはめていく方が考えやすいといいます。中でもカギとなるのは、RSSをブログのようなメディアと連携させることによって、相乗効果を高めることです。


新規事業の立案をする上では、ある程度いろいろなことにアンテナを張り巡らした上で、「これはビジネスになるのか」と考えることが非常に重要で、内藤氏は一日に何回かは、こうした時間を作っているといいます。


2005.10.21
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